2013年7月20日土曜日

とあるソフトハウスの社長の悩みを聞いて来た件

先日とある情報交換ということで知り合いのSES会社の社長さんの悩みを聞いてきました。
結構、こういう相談は多くもらいます。まあ世間話程度にお茶飲みながらの会話なので、結構ざっくばらんに話が聞けて私としても「なるほどね〜」と思えることが多くてそこそこ楽しかったです。

今回はそんなとあるSES会社の社長さんの悩みに考察を混ぜつつ記事にします。

(さすがにここまでは悩んでないです・・・)



そもそもの会社ステータス

そもそもそのソフトハウスさんはどういう会社なのかですが、

社 員 数 :80人程度(9割がエンジニア)
主な開発業種:金融、メーカー
主な得意言語:C、C++
平均年齢  :30代後半くらい?もしかしたらもっと高いかも

という感じです。
ソフトハウスというのは、ソフトウェア開発から販売まで手がける会社のことですね。最近はあまりこの表現は聞かなくなりましたね。この会社も自称ソフトハウスですが、簡単に言ってしまうとSES会社です。一部受託開発もしていますが・・・といった感じです。まあステータス見てわかる通りそれなりに古いソフトハウスさんです。
社長さんもたしか60代後半だしね。
それでこんな会社にはどんな悩みがあったのでしょうか。早速先に上げてしまいます。

・金融系の開発環境の変化
・メーカー系の開発案件の減少
・Web系へのシフトの遅れ

先に悩みを上げると、この3点になります。具体的に見ていきましょう。
まず、金融系の開発環境の変化というのは、これまでこの会社はクレジット、保険、銀行と手広く複数のSIerの下でエンジニアを稼働させてきました。メインの言語はご存知のCOBOLです。金融系ではテッパンのCOBOLですが、最近み◯ほ銀行あたりではついに一部でJavaを取り入れ始めたり、生保でも一部Javaを取り入れる動きがあり、テッパンで高速のCOBOLにも一抹の不安が現れて来たそうです。このままJavaでの開発が増えていくとこの会社はJavaエンジニアがあまりいないため、仕事が無くなっていってしまうというのです。ピンチです。まあ実際に影響がでるのは先の話ではありますが、たまたま直近でも少し金融系が落ち着いて来たらしく、不安を感じ始めたそうです。

続いてメーカー系の開発案件の減少というのは、先に上げた金融系開発環境の変化というのは、すぐには表面化する問題ではなく、なんとかまだ余裕がある問題です。しかし、もう1つのこのソフトハウスの収益源の柱であるメーカーの組み込み系案件の方がかなり雲行きが怪しい状態だそうです。まあ、世間のニュース等を見ていたら誰でも承知の事実ですね(むしろ「今さらかい・・・」と聞いて思いました)。不況の煽りを受けて開発案件がなくなったり、メーカー自体が公共系の案件を失注したりというので、メーカー系の案件が今厳しいそうです。あと更には皆さんご存知の通り、オフショア開発が増えて来ているので、その影響で日本での開発も減って来ていて拍車をかけているようです。
この社長さんいわく、S◯NYも今では開発をインドで行っているので全然だとか。
(確かバンガロールかどっかに拠点があるとか聞いたような・・・)

そしてWeb系へのシフトの遅れです。これも深刻ですね。設備投資が少なくて済むWebアプリケーション開発はやはり増えて来ています。もちろん規模については大・小様々です。言語もLLのPHPとかでサクサクと作ってしまえますから。しかし、この会社は基本CやC++のエンジニアがメイン。Javaの技術者も若干いるそうですが、全然Webアプリケーション開発の経験は浅いそうです。

悩みから導き出される問題点は何か?


皆さんすぐにおわかりだと思います。
問題はこのソフトハウスさんにとって、要は「仕事がなくなる!」ということです。いえ、正確には仕事がなくなるではないですね。言語、業種を問わなければ開発案件はたくさんあるわけですから。えーっと・・・よい表現が見つからないです。かなり悪い表現ですが・・・「時流にそぐわないエンジニアばかりがいてどこにも売れなくなる」というとこですかね。この言葉じりだけでも色々と突っ込みどころが満載です。ここから深堀していくと、

 ・新規取引先の開拓の問題
 ・人材育成の問題
 ・新規での人材獲得の問題

という課題が更に浮き彫りになります。もちろんこれらの課題はこのソフトハウスの社長さんも理解していました。ちなみにこの現状でこの会社さんが行っている課題への対策としては、

 ・新規取引先の開拓の問題 ⇒ 全く実施されず
 ・人材育成の問題     ⇒ 育成する方向性が曖昧で完全に現場での経験任せ
 ・新規での人材獲得の問題 ⇒ 求人サイトには掲載および成果報酬型を活用しているものの
                ほとんど獲得出来ず

というのが実情だそうです。
これは危なそうですね。

新規取引先の開拓を行わないわけ


新規取引先の開拓が全く実施されていないというのは、深刻な問題ですね。
社長さんから話を聞いた限りでは、これまでの既存の取引先の中で正社員のエンジニアがぐるぐると稼働しているだけだそうです。営業の人は2、3人くらいいるらしいのですが、基本的には正社員の稼働先の確保とエンジニアの調達に励んでいて、ほとんどというよりも全く仕事を出してくれる案件元には営業していないそうです。ちなみに社長さんは新規取引先の開拓をするべきだと考えていて、ツテコネ経由で広げようとしているようです(ゴルフ、飲み系外交)。営業さんは全くしていないそうです。新規で広げようとするならば、エンジニアを提供してくれるパートナー探しだそうです。
何故新規取引先の開拓を行わないのでしょうか?これは結構面白い理由です。

 ・そもそもIT系ではそう簡単に新規開拓は出来ないと初めから決めつけている
 ・仮に開拓出来たとしても連れて行くエンジニアがいない

この営業さんの主張は2点であり、意味がないと考えているようです。

そもそも「IT系ではそう簡単に新規開拓は出来ないと初めから決めつけている」というのは良く聞く話です。言っている意味はわからなくもないです。しかしこう言う人は本当に実施した結果を踏まえて言っているのでしょうか。1年間みっちり電話、メール、人づてでも良いので行った結果それでも全く出来なかったというのでしたら、仕方のない結果であり、受け入れるべきでしょう。しかし、それすらも行っていないのならばそれは少し違うと思います。(個人的にはITでは飛び込み訪問はあまり意味がないと思います・・・。)
「仮に開拓出来たとしても連れて行くエンジニアがいない」というのは確かにその通りだと思います。しかし、これも実際に実施した上の結果ではなく、あくまで事象を推測したものに過ぎません。
ちなみにこの社長さんは新規取引先の開拓については全く逆の発想を持っている人でした。「仮に開拓出来たとしても連れて行くエンジニアがいない」という前提ではなく、この社長さんは「案件元を開拓して良い案件を抱えれば、それをパートナーに紹介し続ければ、最初の内は集まらないかもしれないが、徐々にエンジニアは集まるのではないか」と考えていました。更にはもらえる案件も即日からとかではなく「2ヶ月後からの案件とか少し先の案件をもらうようにすれば、先を見てエンジニアを提案してくれるパートナーがいるのではないか」と考えていました。個人的にはとても面白い発想だなと思いました。

ちなみにこの社長さんは新規開拓について、もう1つ核心的なことを言っていました。
それは「今こそ新規取引先の開拓をするべきだ」ということです。
今は景気もそこそこに良く、SIer等も案件を多く抱えている時期なのでこういう時期にこそ取引先を拡大出来るように動くべきだと考えているそうです。逆に不況期の場合は案件がなく、要員についての需要がないので話を聞いてくれないはずだ、とのことです。まさにその通りです。今、案件をくれる取引先を開拓するには追い風です。どこもエンジニアを探しているため、エンジニアのリソースがある会社には関心があるからです。逆にエンジニアが集まらなくて困っているSIerがほとんどなのは確かです。
エンジニアが集まらないからといって、エンジニア調達にやっきになってSES会社巡りをしている会社さんもあるでしょう。当然必要な事です。しかし景気のいい時期こそ案件を取りにいった方がよいですね。私もこの社長さんの話を聞いてたしかにそうだなと思いました。

人材育成はどの会社も抱える課題


この課題はソフトハウスのようなSESメインの会社ではどこも抱える悩みでしょう。ほとんどの会社は「どうせ社内で研修しても結局現場経験がなければどうせ採用してくれないし、意味ないでしょ」と諦めているでしょう。それで結局現場での経験任せになりがちです。しかし、研修、勉強会等を行わなければそもそもゼロです。なーんにもありません。つまり何の知識も増えないということです。逆に勉強会や研修等を行えばすぐに役には立たないかもしれませんが、いつかどこかで役に立つかもしれませんし、知識としては個々のエンジニアに蓄積されていきます(「会社にとっては費用対効果の怪しいただのコストだろ」という話は抜きでお願いします)。ソフトハウス、というかIT業界はそもそも人材がその会社自体の中核を担うようなものなので、人材育成にコストを使わずどこにお金をかけるんだ?と思います。個人的には行うべきです。

人材を獲得出来ないのがどの会社も共通の悩み


エンジニアの採用」これはどの会社も苦戦していますね。
こればっかりはどうしようもないです。自分が中途で就職先を探すとしても、ソフトハウスのようなSESメインの会社ではなく、自社サービス会社や大手SIerあたりから募集概要を見て応募していきます。受からなければどんどん小さいところにシフトしていきます。
まあ、そんな当たり前の話はいらないというわけですが、ではどこに行っても同じなSES会社はどうやって中途でエンジニアを獲得しているのでしょうか。
あくまで私が狭いネットワークで聞いた話ですが、
 ・好立地をアピール(交通の便の良さをアピール)
 ・オフィスの綺麗さをアピール
この二つが比較的訴求効果があるそうです。あとは、コーポレートサイトをなるべくレトロなものではなく、デザインの凝ったものにするだとかも次点として重要なようです。もちろん、正社員数や平均年齢、取引先なんかもチェックされるそうですが、とりあえずのとっかかりは好立地をアピールオフィスの綺麗さをアピールするのがimpからCTへとつながるようです。(SES会社のエンジニア獲得については、また別の記事で特集を組もうと思います。)

現状としてはどうするべきか?


このソフトハウスのケースですが、「売り上げが上がらない」「先行きが不安」という問題に直面しています。現状では何もせずぼーっとしているだけのようなものなので、新規取引先の開拓を行うべきです。この会社が案件をくれる新規取引先の開拓を常に行っているにも関わらず、全く成果が上がらないという結果が出ているのであれば話は別ですが、何の結果も出ていないのに仮説だけを立てて実行していないということが問題です。
もちろん、現場の営業さんの言い分もあるでしょう。おそらく「新規開拓をする暇がない」とか「通常業務に支障がでる」という言い分が高い確率で出るでしょう。これもおかしな話です。この会社の営業さんは基本的な業務はほぼ18:00には終了しています(確か勤務時間は9:00〜のはず)。通常業務については、最近多いブローカーのごとく他社のエンジニアと商流の深い案件を追っかけて忙しなく動いているSESの営業会社みたいなところではなく、エンジニアは基本的に稼働しているので、ヒマーな感じです。業務で行うことと言えば事務作業とかそんなレベルです。それで忙しいというのでしたら、作業効率が悪いかサボっているだけだと思いますので、改善の余地はあるでしょう。まあ他人事ですが、新規取引先の開拓を行う余裕はあるはずです。

人材育成については、各エンジニアは様々な場所で稼働していますので、集まって勉強会というのはなかなか難しいのかもしれません。しかし行わないとそれこそ全く何の知識も増えません。ずっとゼロです。まだ行ってもいないのですから、とりあえず行ってみて全然意味がないというのであれば止めるという答えを出すというのも良いでしょうが、とりあえずやってみるべきだと思います。テーマも月並みなAndroidとかObjective-Cとかでも良いですし。

採用活動については、現状では求人サイトの掲載を行っているようですが、こちらはこの会社もアホではないので、成果が全くないというので、成果報酬型を中心にしているようです。成果報酬型というのはリブセンスモデルの方ではなく、リクルートエージェントやデューダの方です。エンジニアの獲得がどこも苦戦している状況ですのでこちらはムリに求人サイトに掲載して広告料を取られるよりは、そういった成果報酬型で採用するのがよいかと思います。あとは最低限の話ですが、既存の人材の流出をしないように防ぐのが最たる策かと思います。まあ流出をしないようにする策としては、エンジニアを大切にするということですね。

ここまで偉そうな事を書いたが・・・

しかし私は経営の専門家でもなんでもありません。ただの1フリーランスです。MBAホルダーやご立派な経営コンサルタントからすると、( ´,_ゝ`)プッって感じでしょう。私の考えとしては、単に何もしていないのであれば、何か行動をして結果(成果という意味ではなく、◯か×かという意味での結果)をまずは出してそこからまた、考えていくべきだと思います。単純にPDCAサイクルを回すべきというだけです。それすらせずにただ、ぼーっとしてしているだけだとそりゃ危ないですね。
まあ個人的にはもっとも問題なのは、社長さんの方針に従わない営業さんが一番悪いと思いますがね・・・。コミュニケーションロスとでも言うのでしょうか。やたら社内の飲み会の多いらしい会社さんなのにまるで意味がないですね。無駄な飲み会と化してますね。
飲み会に費用対効果を求めるのも興ざめではありますが、会社の経費で落としているのであれば、ある程度は考えるべきでしょうね。ほほほ。まあなんとか打開してもらいたいもんです。